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「ナショナル・ギャラリー英国の至宝」をみて

観てきましたよ、渋谷・文化村で「ナショナル・ギャラリー英国の至宝」を。
3時間にも及ぶ映画で、
「第71回ヴェネチア国際映画祭 栄誉金獅子賞受賞
巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、
英国の〈小さな美術館〉が〈世界最高峰〉と讃えられる─その秘密に迫る!」
とあったから、それはもう楽しみにして、行って参りました。お安い火曜日を狙いました。

感想。
長い!長すぎる!!!
隣の若者(男子)は、途中寝て、一瞬いびきをかいていたが、わかるよ、その気持ち。
いったいこの映画は、何が撮りたかったのだろう。
延々と続く、(たぶん)学芸員による絵の解説。

面白かったのはいくつかのシーンだけ。
・マラソンの終点になることの是非を論議する会議(というか、トラファルガー広場が終点なのだけど)
・予算をめぐる会議。「昨年は280万ポンドと思ったら490万ポンドで、寄付もいれれば600万ポンド」と言っていたのをしっかり暗記した(苦笑)。
・黒檀の額に関する説明
・ある絵の持ち主の由来(スウェーデンの女王のものだったがオルレアン公のものになり、イギリスの貴族2人に渡った)
・光の効果の話。大元は人間もはいれるくらい高い暖炉の上にあったという絵の話。

あとは・・・いくつかあったけど、忘れた。
これは本当に長い。2時間か1時間半くらいに編集したほうがいい。本気で眠かった。
第一、絵の解説をする映画だったら、英国ナショナルギャラリーである必要がないじゃん・・・。絵の解説を主にするなら、イギリス人によるイギリス屈指の絵、じゃないと、わざわざ「ナショナルギャラリー」とする効果はないのでは。
そう考えると、悪いけどイギリスって画家はそんなにいないわよね。英国王室にかかわる絵や、やっぱりというか最後はターナーで決めて、出演させていたけど。

今更ながら気づくが、そう思うと、イギリスって「これぞイギリスだ~!」って絵がないわよね。私が言うのは、「ジョセフィーヌ(ナポレオン)の戴冠」とか、「民衆を率いる自由の女神」みたいな、いかにも、というその国を象徴するような大作。(権力者の肖像画なんていうのはどの国にも昔からあるけれど、ここではそういうものを言っているのではない)。ルーブルを見慣れているので、私の中であるのが当たり前になっていたけど、考えてみれば他の国にはないかも。イタリアは美の宝庫ではあるけど、キリスト教関係が多いし。なぜないんだろう。でもこれも、私が住んでいるのがロンドンだったら、「なぜフランスにはあるんだろう」という発想になるんだろうなあ。

うーん。。。。
でもね、監督も撮りようだったと思うのよ。他にいくらでも、撮りようがあったと思うのに。それ次第で、本当に「〈世界最高峰〉と讃えられる─その秘密に迫る」というコピーどおりの内容にできたでしょうに。あっちこっちから色々横やりと制約が入って、自由に撮れなかったのかも。
結果的に、「そういえばイギリスって絵画が貧しかったっけ」なんて思わせる、まったくの逆効果になってしまった。昔のルーブルの映画のほうが何倍もよかった。あれもそれほど「必見!絶対見るべき!」というほどの映画じゃなかったとはいえ、淡々とフィルムを回しているだけなのに、十分楽しめた。90分くらいで短かったというのもあるけど・・・。

そのほか気づいたこと。

「レオナルドの絵を一堂にかいしたおかげで、絵がお互い響きあって、見えてくるものがある。そうならなければ学芸員の失敗だ」と言っていた、わりと若めの学芸員がいた。たぶん最後に、レオナルドの岩窟の聖母の位置について説明していた人と同じだと思うのだけど、あの人はなかなか優秀なのではないか。3か月ずっと毎日見続けるというのは、学芸員にも勉強になるんですね。

それと、ナショナルギャラリーって入場無料。だからまずいこともあるんじゃないか、と思ってしまった。無料なのは素晴らしいと思っていたけど、やっぱり自分で稼げないというのは、欠点にもなる。私は昔、店頭売り月刊誌と、無料の月刊誌をつくっていたことがある。そのときの違いを思い出してしまった。なんというか、淀むというか・・・。
商業主義にならないからよい、とは素直に思えないと映画を見て思った。なぜか最後のシーンは、ギャラリーで男女二人がバレエで踊っているシーンで終わるのだけど、悪いけど「なんだこれは」と思った。ウイーンフィルのニューイヤーコンサートでも、テレビでは踊っているが、ああいう違和感を感じた。途中、説明はないけど、男女のヌードのデッサン会みたいのもあった。館内のピアノ演奏会とか。人を集めて講演会みたいのも。これらすべて、集客や、「存在意義」を見せるための、ギャラリーのあの手この手なのだと思う。それらは悪いことじゃないし、どの美術館でもやっていると思うのだけど、なんかこう、ものによっては強烈な違和感をもつ。

まあ・・・絵だけの美術館って大変よね。確かに昔の絵は、知識があることで俄然面白くなることもあるけれど、なんかこう・・・ここまで永遠3時間のなかの2時間(と感じた)も説明されるとやりすぎかも。

逆説的で申し訳ないけど、やっぱりルーブルって偉大なんだわ、と思ってしまった。世界中にあまたあれど、ニューヨークにロンドンにバチカンにフィレンツェにロシアにベルリンにオランダに(まだまだもっとある)・・・でもやっぱりルーブルが一番有名かも。そう感じたけれど、まだ「なぜなのか」とはっきり言葉にはできない。もちろん、ルーブルは全部が一つになっていて、イギリスでは大英博物館と分かれているという事情はある。でも・・・うーん。やっぱり近代の美術館はルーブルが発祥の地、つまり世界で一番手であるという意味は大きいのかもしれない。

でもどの美術館も大変そう。今度は、オランダの美術館の映画見に行こう。予告編みたけど、オランダ人らしさが出ていて、すごくおもしろそうだった。そういえば、クリミア美術展やっていたのオランダじゃなかったっけ。その後どうなったんだろう。どこに返したのか、返していないのか。

でも、どんなに素晴らしくても、やっぱり美術館は「過去の収蔵」。
その視点を忘れて考えるのはいけないなと思いました。
けなしてばっかりでしたが、色々勉強になった映画でした。見てよかったです。
(でもやっぱり長すぎるけどね)

おしまい。






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