SSブログ

ルーブル美術館の全室を見終わりました!!!

今日5月2日(土)、ルーブル美術館の全部の展示室を見終わりました!
あー、足掛け3年だわ。
メ・フェリシタシオン・ア・モワ!!!

いつも一人で見に行っているので、今日は座っている監視員の人に「お願いがあります。今日、私は3年かけて全部の部屋を見終わりました。おめでとうって言ってくれますか」と言ったら、美術が好きでこの仕事をやっていそうな彼は、パチパチ手をたたいて「おめでとう!」と言ってくれました。「でも、展示が変わるんですよね。この前久しぶりにドゥノンに行ったら、前になかった絵がありました」と言ったら「生きている美術館だからね」と言われました。

その後、某ちょこっと高級カフェで一人お祝いをしました。土曜日でバカンス期でしかも雨だったので、とても混んでいたのもあって、アイスコーヒーだけにしました。テーブルのお会計で、お店の葉書きカードをそえてくれました。給仕の男性は「どうも」とか言ったり、日本人に好意的で明るい人なのかなと思ったので、「すみません。今日は私にとって記念すべき日なんです。カードに「おめでとう」って書いてくれませんか」とお願いしたら、書いてくれました! お礼を言って、ちょっとチップを多めにおいて、出ようかなともそもそやっていると、なあんと!!! マカロンを4つ、お皿にのせてくれたんです!!! しかも、数分後に、生クリームをそえておいしいショコラも出してくれました!!! もう感激・・・・うるうるうる。。。。
忙しそうだったので、テーブルに敷かれた紙に「ありがとう!」とフランス語で書いて、出る時にそこにいた別の給仕の人に「同僚の方にお礼を伝えておいてください」と言ったら、彼がたまたまやってきて、「本当にありがとう。嬉しかったです」と言い、また見ていない作品がたくさんあることを言って、「でも全作品を見るのには10年かかるかも」と言ったら「またおいで!」と言ってくれたのでした。勇気をたくさんもらいました。

今日は私のルーブル記念日。

「人間史 90世紀を見終わったから、5月2日は(私の)ルーブル記念日」

・・・すみません、下手ですけど。。。


さて、長期閉鎖以外のすべての部屋を見終わって、ここで何を学んだか、総括して書いてみたいと思います。小さな事から、大きな事まで書いて行きます。

1、「ルーブルって宮殿だったんだ・・・!」

正直に告白します。私、美術館とばかり思っていました・・・(汗)。いや、美術館ですよ、もちろん。でもね、元々は宮殿だったんです。
あれは私が高校生のときだったか。外国人に東京を説明していた私は、「東京はものすごーーーく大きくて、中心がない」と言ったのです。でも後ではた!と気づいたんです。中心って皇居じゃない・・・。「居」の中に入った事がないから(というか見えもしない)、知らなかった。皇居って江戸城だったのか。知らなかった・・・。
今回も同じような感じです。ルーブルってパリのど真ん中、1区よね。王宮に決まっているじゃない。王宮ってベルサイユだと思ってた。不明を恥じるってこのことかも。

長期閉鎖をのぞいた公開している全部の展示室を見て、建築としてのルーブルの面白さを知る事ができました。それだけで「探訪」でした。あまり有名ではなくて人が来ない部屋々々で、遠い昔に存在した、もう失われてしまった文化の美術品が、ありし日を思い出させるように置かれていた展示室。あの独特の雰囲気、空気、、、、一生忘れられません。

2、絵の大きさ

本や映像で見ているとわからなかったのが、絵の大きさ。「この絵って、こんなに大きかったのか/小さかったのか」という発見。
単純な感想ですが、結構毎回驚いてました。
ただ、周りの環境による印象っていうのもある。ラファエロの聖母子像という有名な絵があります。このまえ下のナポレオンホールで、プッサン展に展示されてました。そこで見て「こんなに大きかったんだ」とびっくりしました。プッサン展は特別展だから、日本の展覧会と同じような感じ。いつも展示されているグランドギャラリーで見ると、そんなに大きい感じがしなかったんですよね。私はこの絵が好きで、前を通るたびに、必ず立ち止まって眺めていましたが。場所によって印象は変わりますね。
教会に飾られていた絵なんかは、実際に置かれていた教会では、もっと小さく見えたのかもしれません。
あと、「思っていたより色調が暗い」っていうケースは多いですね。撮影の時は細部が見えるようにかなり明るくしますのでね。印刷の具合もあるし。

(印刷物に関しては、これはなんとなくだけど、写真がデジタルになって、昔のポジからの印刷とちょっと変わったのかなという印象もあります。もっと昔の人なら、オフセットになった段階で変わったというでしょうね)。

3、何度も書いていますが、「知識として知ったものを見て確認」じゃなくて、「とにかく見て、感じて、あとから知識」という逆の方向に考えがかわったこと。

まずは見ると、いろいろな発見があったように思います。自分で考えられるというか。
今日の午前中に本を読んでいて気づいたんですが、「聖母マリアの戴冠」という絵があります。戴冠というくらいだから、ひと際上の存在になるのです。見ている時は「ふーん。こういうのもあるのか」と思って見ていましたが、昨日はた!と気づきました。私と同じように(前記事プッサン参照)、「神は永遠、キリストは復活、なのにマリア様は私たちと同じように死ぬだけなんて、あんまりだ!」と思う人々がたくさんいたんじゃないかと。もちろん聖母マリアは聖人ですけどね。それだけじゃ納得できない、物足りない、「我らが女性」(「ノートルダム」)なのに・・・と。
これが私の思い込みなのか、それとも宗教史の中ではとっくに言われていることなのか、全然知りません。でも、私はそう感じたんです。
「情報と知識は違う。情報は置き換え可能。知識は自分で体得したもの」という意見を読んだ事があります。これでいえば私は、本物の「知識」につながる大事なきっかけを、まずは見る事で得たのだと思います。

4、どのように歴史が描かれたかわかったこと

正確には、わかった「つもり」になったこと、ですけど・・・。
これはフランスに住むようになって割とすぐにわかったことだけど、日本で習う西洋史というのは、当の西洋で重用視されていること。当たり前と言えば当たり前なんだけど。
フランス史ならフランスで、ドイツ史ならドイツで重要な歴史的事項というのが、日本でも重要になる。ただ、欧州は日本と違って一国で独立して描けないので、「西洋史」を描くとなると、各国の見解が違うことがある難しさがあるでしょうが。
それは気づいていたけれど、さらにもう一方踏み込んでわかったと思う。

古代ギリシャローマが重要だと、同美術がたくさんあって、美術館でも大きなスペースを占めている。
イランは、イラン美術は独立して大きなスペースを占めることができるほど豊富。そして今も始終話題になる(問題になる?)ほど注目されている国。要するに大国なのでしょう。
キプロスなんて、過去に重要な文化があったことが美術館でわかる。今じゃ二分されているちっぽけな小さな島なのに、しっかり欧州連合の加盟国。

豊かな文化や文明があったから、それが美術品という証拠で残っている。
そのことが、ある国の現代の地位や、歴史での地位を決める。
いや、大きな影響を及ぼすような国があったからこそ、美術品の発掘や研究が盛んになったのか。
「卵が先か、鶏が先か」の議論になってしまうけど、どちらにせよ、美術品や発掘品というのは、何か重要な「あかし」であるということ。
ただ美しいというだけじゃない。
例えばですが。
いま、ウクライナが大きな問題になっている。ウクライナは「えっ、ロシアの一部じゃないの?」くらいに思っている人は、世界中に少なくないと思う。ほんの数点だけど、ルーブルにはウクライナの一部がローマ帝国領だったことを示す美術品がある。出土した場所は必ずプレートに書いてあるけれど、「ウクライナ」とあって私は驚いて、家に帰って調べてみた。・・・ほんとだ、現ウクライナの黒海沿岸部の地域は、ローマ帝国に入っていたんだ、、、と知った。全然知らなかったのです。
もちろん、ミュージアムはルーブルだけじゃないので、他の所にも美術品(出土品?)はあるのだと思う。でも、ルーブルに少しでもあることは実はとても大事なことなのではないのかしら。この本当に小さな展示が、ヨーロッパ人になりたいと切望する、今のウクライナ人のこれからの地位を決める「あかし」になるのではないか、と思いました。
私がいいたいのは、そういうことなんです。うまく伝えられませんが。。。

5、文明が去ったあとも、歴史は続いているということ

A civilisation, gone with the wind。(文明は、風と共に去った)。
アメリカの小説、「風と共に去りぬ」の映画の最初に出て来るセリフです。
風とは、この作品では戦争をさしました。

でも、この世から土地がなくならない限り、人がいる限り、そこに歴史は刻まれる。
これも、考えてみたら当たり前の話なんですけど。。。自覚がありませんでした。
例えばエジプト。古代エジプトが、クレオパトラの自殺によって滅亡というのは、よく知られている。
でもその後にエジプトがどうなったか。
私はそんなこと、考えた事がなかった。今もエジプトという国はあるというのに。
(もちろん、永久に無くなった国だってある。そのほうが、かえってわかりやすいのかもしれないけど)。
そういう「後のものがたり」というのは、実はすごく面白いんじゃないかと思ってます。

ルーブルで、私の目の前に存在したオブジェが「大文明は滅んでも、私たち人間はそこにいた。生きる営みを続けて来た。昔ほど素晴らしいものではなかったとしても、美しいものをつくり続けた」ということを伝えてくれました。
私は彼らの「昔ほど素晴らしいものではなかったとしても、美しいオブジェ」に人生観が変わるほどに感動しました。
この面白さに気づかせてくれたのは、ルーブルでした。

6、文明は融合する

5とも関係があるのですが。
偉大な文明が滅ぶと、たいていの場合、次に別の文明が占領します。
文明がおこるような豊かな土地を、他の人々がほっとかないからです。
そうすると、文明や文化の融合が起こります。
融合じゃなくて消え去る(つぶされる)ということもあると思います。
もっぱら力関係によるのでしょう。
ただ、前の文化が完全に一掃されるというのは無理なんじゃないかな。。。
日本だって、こんなに西洋化されて、例えば着物なんて日常で着ている人はいない。ほぼ消滅してしまったけど、それでも日本文化というのは存在している。そういうのに似ているのではないかな。
(日本は島国だから、大陸とは一緒に考えられないけど。。。)

「文明の融合」ーーこれは私のテーマとあっていて、とても興味があります。
この視点に興味をもったきっかけは、キューバでした。
ハバナで行なわれたキューバの宗教を描く写真展のおかげです。
ニューヨークのメトロポリタン美術館でインターンシップをしたことのあるオーストリア人の人が立てた企画です。彼とはすごく昔、アルルのユースホステルで出会いました。二人とも欧州最古と言われる、アルルで毎年開かれる写真展を見に来ていたんです。

ルーブルは、文明の融合という実例に満ちあふれていました。
ここにも、あそこにも。
私の前に繰り広げられる、人間が、思想が、文化が融合した確かな跡、証拠の品。
もう一度おさらいして、見直してみたいです。

7、知らなかった所が面白かった

西洋の絵画は、ある程度は知ってました。
それでも面白かったけど、やっぱりまったく未知のものが一番面白かったです。

館内も、どこかで見たような所じゃなくて、まるで迷路みたいな、まったく未知の空間が、いちばん興奮しました。

8、昔のものになればなるほど、ほとんど考古学。考古学と美術は違う。
考古学は「美術的価値や、当時の価値はともかく、古いだけで研究の価値がある」、美術は「鑑賞に耐えうるもの」という事だなと感じました。ルーブルでは両方展示されていることと、両者は違う事に、見ていて気づきました。

ルーブルは「美術館」、大英は「博物館」。どちらも英語ならミュージアム、フランス語ならミュゼだから同じ。でも日本語だと訳が2つある。実際には、ルーブルは博物館でもあり、大英は美術館でもある。でも、収蔵の品とか歴史を見ていくと、この訳は一応適していると思う。

考古学と美術があいまいなものも、結構ある。それに価値を与えるのは、見ている「わたし」。こんなにたくさんあるのだから、自分が好きなのを選べばいい。自分の好き嫌いや直観に頼っていい。
もちろん、ルーブルにあるということは、既に一定の価値は与えられているのでしょうけどね。
でも、全部が解明されているとはとても思えない。たくさんの考えるきっかけに満ちていると思う。
もし子どものときにこんなものを見ていたら、将来が違っていたかもしれないわ。
今さら私は研究者にはならないし、なれないけど、知識があるともっと自分が豊かになれると思います。


ルーブルは本当にみんなに愛されているのね。国を問わず、たくさんの人をひきつけるのだわ。芸術っていいな。
もちろん、当時はそんな大人しい存在じゃなかったものは多い。もっと生々しい、芸術家と依頼者や社会・政治との闘いだったものもたくさんあった。でも、年月がたって鑑賞にたえるものだけが残された(考古学の域のものは別)。

この偉大な存在の中で、自分はどこのピースに当てはまるのだろう。ただ見ているだけ。それで、もちろんいい。もともと見せるためにミュージアムは存在しているのだから。
監視員として働いている人と話す機会がわりとあったけど(自分から話しかけたんでですが・・・)、やっぱり美術が好きなんだと思う。たとえ複雑な仕事じゃなくても、美術の側にいたかったんだと思えるような風情の人が多い。
ルーブルとの関わり方は人それぞれ。旅行者として、2時間だけ見るのもいいと思う。でも私は、何かもっと自分にできることがあるのではないかと追求したい思いがあるし、それをしたいと思ってる。
うまくいくかどうかはわからないけれども。
でも、全部見られたなんて、それだけできっと私は幸せ者なんだわ。

今日は一つのお終いだけど、新たなスタートにしたいと思っています。



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。