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優しさと弱さ

どうも最近、家のことばかりですみません。もう少しお付き合いください。

さて、知人(日本人)の印象的な家の体験談をきいてしまいました。

彼女が引っ越してくると、お隣の一人暮らしのお年寄り(男)が週末に「3ユーロかしてください」とやってきたそうです。「は?」と彼女は思ったけど、2ユーロわたして「返さなくていいですから」と言いました。
月曜日に、本当に2ユーロ返しにきました。
ここまではいいのです。

ところが、その後何度も彼女の扉をたたく音が。もうめんどくさいので、彼女はいつも居留守を使っていました。そのうち、お隣は窓からゴミを下にぼんぼん投げ落とす迷惑なやつだと判明。彼女も頭にあやうくあたりそうになったことがありました(彼の家は玄関の上なのです)。もっとかわいそうなのはすぐ下の家で、テラスがあるために、ゴミのほとんどがそこに落ちてしまい、耐えきれなくて自分の購入した家なのに出ていったそうです。

もっと怪しいのは、夜中の3時ごろ「モウディ・・・・」と繰り返す叫び声と、釘をうつような音がいつもすること。「モウディってなんだ?」と辞書をひいたところ「呪う」という意味だった・・・。
「わら人形???」。
フランスにあるのだろうか???

しかも、耳が遠いのか、ものすごいテレビの大音量(日本でも最近おばさんに実刑がくだったらしいですね)。ところが、すでにご近所で結託して、警察を呼んだことがあるのだそうです。彼は警察に「自分はガンで退院したばかりだ。でももう永くはない」と語り、警察も強くは言わなかったとか。法律でそういう人を追い出してはいけないとかいうのもあるらしい。それで周りの人もみんながまんしている(何を?死ぬのを?)のだと、聞きました。

そのうち、彼女の扉の外だけ水びだしにされていたり、水の元栓を閉められたり(おかげで彼女は蛇口からでる熱湯でやけどをしそうになった)、どう考えても彼のしわざで、気持ち悪くなりました。

そこでついに引っ越しを決意したのです。

それだけだったら、ただの迷惑であぶないやつなのですが、ある日彼女は見たのです。夜も静まったころ、彼はいきなり窓をあけて大声で人を恨むようなことを叫びました。すると、ななめむかいのフランス女性が窓をばたん!とあけて「あなた、いったい何が望みなわけ! うるさい!」と怒鳴ったのです。(つよいぞ〜フランス女)。すると彼は、まるでぶたれた子供のようにしゅんとして「ごめんなさい……」と言って引っ込んでしまったのです。

彼女は憐憫の情にかられました。といっても、もちろん決意はかわらず引っ越しましたが。

考えさせられました。

彼女に嫌がらせ(?)らしきことをしたのは、もしかしたら寂しくてかまってほしかったのかもしれません。でも、彼女から見れば迷惑千万。前回かいたように、彼女の甘さを読まれてつけこまれたのです。でも、甘さというのは、優しさでしょう? 優しそうだから、自分より弱そうだから、彼女はつけこまれたとも言える。

フランス女性は強いから、つけこむ余地がない。いわば優しくみえない。フランス女性にしてみれば、つけこまれたくないから強くなったのでしょう。強くなければ、彼女のような被害にあいますからね。

一方、フランス(ヨーロッパ?)には根強く「アジア人女性/日本人女性は優しい」という認識があります。女性が強すぎて、男性は疲れてしまう。その点、アジア(日本)の女性はいつもにこやかで、強くなくて優しい──という神話です。
でも、これ神話じゃなくて本当のことだと思います。この国にいると「柔らよく剛を制す」という言葉を思い出します。フランス女性になれない私は、これでいくしかないとよく思いますね。

フランス女性は、本当に硬質です。前述したように、何でもありの個人主義の社会のなかで、自分を守るために、自分の生き方をじゃまされないために、そうなったのです。それじゃあ、男はどうか。

男のほうもどうかと思います。
フランスには一人暮らしの孤独な老人が本当に多いのですが、これも個人主義の産物だと思います。
日本は、「子供ができたから結婚する」「子供がいるから、夫婦仲はひえきっているけど、家族でいる」という考えが、徐々にくずれてきているとはいえ、フランスに比べれば極めて強くあります。これは要するに「子供のために自分を犠牲にする」ということです。だからこそ将来、子供も親のことを考えてくれるというものです。犠牲とは、相手のことを自分のことよりも考える、つまり本物の愛だと思います。

でも、子供のために離婚しないなんて考えは、フランスには(日本と比べれば)ないといっていいでしょう。子供は愛する。でも自分の人生は自分のもの。子供のために離婚しないなんて、考えれらない。こういう考えは、まさに個人主義らしい。

つまり、いつも自分が大事? 個人主義には他者への愛がかけている? そうですね、かけていると思います。だから日常生活では「人に親切にする」ことが大事なんです。優しくするんじゃありません。「他人は他人」が基本。おおげさにいえば「他人は敵」が前提。だから敵意はもっていないし、無関心でもない、フレンドリーであることを示すために、親切にするのです。
この社会にあって、「優しさ」とは「弱さ」の別の言葉、あるいは「犠牲をともなう本物の愛」にぞくする言葉です。

上記の男性だって、ガンで死のうというのにたった一人、誰かを呪っているのは、もしかしたら健康な時に、他人のためではなく自分のためだけに生きてきた=自分勝手に生きてきた=他人に愛を与えなかった 報いのせいかもしれません。

こういう人達がいるから、こういう社会だから、キリスト教の無限の愛は必用だったのかもしれない。でも、いま大半のフランス人はほとんど無宗教に近い。どうするのかな・・・。

そう、個人主義的な生き方も、健康なうちはいいですよ。強く生きていられるうちはね。

でも人間は、いつも健康とは限らない。年もとる。死ぬ。強い人だって弱さをもっている。もともとそんなに強くない人もいる。一般的には、個体の強さや自立度は、日本人と比べものにならないほど、フランス人は強いです。その強さが、魅力的な人もいます。孤独で強い人を、フランス人はあがめる傾向があると思います。自分の意志で人生を選び取ってきた人物として(特に女性)。これは日本ではほとんどみかけない、フランス人ならではの美意識でしょう。

でも、強ければ幸せなのかな・・・。

いろいろなことを考えてしまいました。答えはでそうな、でなさそうな、そんな感じです。


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コメント 5

豆柴

こんにちは。
価値観の違いなんでしょうか?
生まれ育った環境で、それらは変化するんでしょうが、国が違えば大きく違ってくるんですね。
親切心や、優しい心ってとっても大切だと思いますが、それを甘いって思う人もいる・・・
難しいですが、いろんな文化に客観的に接する事ができれば、楽しそうですね。
あくまで客観的に、ですが・・・w
by 豆柴 (2006-04-22 10:10) 

Sally

豆柴さん、コメントありがとうございます。
そうですよね、国によって本当に違うと思います。フランスってお隣のイタリアと似ているところが多いのですが、それでもかなり違います。
よく子供の集団に出会います。本当にかわいい。日本の子供とほとんど同じ。(ように見える。実際はちがうのかな)。なのに、「ああ、あと15年もたつと、みんなああなるのか……」と思ってふか〜いため息がでることが。この子達まるごと日本に連れていけば、日本人のような考え方になるんだろうな・・・と思いながら見ています。
by Sally (2006-04-22 16:11) 

makiko

はじめまして。いつも、楽しみに読ませていただいている、なぜかフランスが気になる読者でございます。農耕民族と狩猟民族のちがいなんでしょうかねえ?聞きしに勝る方々ですねえ。ちなみに、日本に子宝思想が庶民にまで及んだのは江戸時代の平和な文化が浸透した頃からだとか。それぞれのイエを存続させることで年をとっても安心して生きるため。先の見通しをたてるということは、狩猟民族の血には流れてなくて、いかに、自分の身を守るかという本能が働くのでしょうか?
by makiko (2006-04-23 07:49) 

Sally

こちらこそ、はじめまして。子宝思想は江戸時代に普及したのですか。知りませんでした。よくフランス人を語るのに、「狩猟民族」と言われますよね。確かに正しいと思うのですが、フランスだけではなく、ヨーロッパ人はほとんど狩猟民族とも言えそうです。それに、ドイツ人と比べたらフランス人は農耕度が高いような気がします(印象だけですが・・・)。むしろ、フランスの地理に理由があるんじゃないかと思うのです。フランスは「民族の交差点」という別名があります。陸からも海からも、異民族が平和的に、あるいは征服するためにやってくる。イギリスは海からだけ、ドイツはほとんど陸からだけなのに。それで、自分を守るためにこうなったんではないかなと。特に私は地中海沿岸部にいるので、より強くそう思うのでしょう。フランスでも北のほうは、精神風土がかなり違うらしいので。でも、フランス人は異文化に関心が高くて、とても寛容な側面をもっていますよ。そういうところは、とても好きです。
by Sally (2006-04-23 09:57) 

makiko

早速、お返事ありがとうございます。私もなぜか、フランスが大好きなのでございます。でも、日本から離れない自分がいて、最近は書道などはじめたりして、ますます日本的な自分と向かいつつ、毎日のようにセーヌ川のほとりであるいは、りおねえのブログを読んでる私は、自分でもよくわかりません。ダンスレッスン、バレエレッスン、フルートレッスン、ジャズピアノレッスンと若い時にしたかったこと、全部入れてしまって50代中盤。これからも、書き込みたい思ってます。どうぞ、沢山、情報をくださいね。
by makiko (2006-04-23 23:05) 

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