SSブログ

アングレーム国際漫画祭。フランスのメディアの反応 その1

なんだか「アングレーム国際漫画祭」の話題と質問が多くなりました。

「フランスでは話題になっているのか」と聞かれます。

お答えしますと、あまりなっていません。

以下に、2月1日に、グーグル・フランスの「ニュース」カテゴリーで「アングレーム(国際漫画祭)」のキーワードで出てきたものを、簡単に紹介します。
全部じゃないですが、私が「メディアらしいもの」と感じたものを紹介します。

イスラエルのスポンサーともめている話のほうが多いし、がぜん関心が高いですね。

●ル・モンド紙
(現在、これがル・モンドのネット版で、「シェア数」で3位ですね)

タイトル「アングレーム国際漫画祭におけるソーダストリームの支援が問題になっている」

ソーダストリームというのは、ガス入りの水で、イスラエルの会社だそうです。公式スポンサーに付きました。そうしたら、漫画家が共同で抗議の公開書簡を発表した。アメリカ人漫画家、 Joe Sacco, フランス人、Siné,  チュニジア人、Willis From Tunis, イスラエル人Amitai Sandyなどの署名からなるもの。内容は、この恥ずべき会社とのスポンサー契約に怒りと失望を覚えるから、すぐにスポンサー契約をうちきれ、というもの。日本でも出てくる、漫画祭代表のFranck Bondouxは、「この会社が何において恥ずべきものか、全然わからない」と反論しているようです。
何が問題なのだろう・・・と思ってル・モンドの記事を読みましたが、予備知識のない私には、難しくてよくわかりませんでした。ただわかったのは、この会社は、「イスラエルの占領によって脅かされているパレスチナの支援者たちに非難されている会社」だそうです。何か会社がヘンなことをしたのかと思いましたが、問題になっているのは、この会社の位置のようです。イスラエルとパレスチナの間で問題になっている工業地帯にある会社だからみたいです。
ボイコットや制裁を唱える国際的なキャンペーンがあって、同社は2月3日からはアメリカのスーパーボールのスポットCMもやっているけど、既にこの会社と契約を結んでいるアメリカ人女優スカーレット・ヨハンセンをめぐって、問題が起きているそうです。
確かに欧米では、日韓なんてどうでもいいよくて、こっちの問題のほうが大事かも。

●ポピュラーな新聞「ル・パリジャン」(地方でもオウジョウデユイという名前で売っています)

やはり、ソーダストリーム問題をとりあげています。日韓の問題はなし。
読んでみたら、この抗議の公開書簡に署名したのは、なんと40人だそうです。そりゃあニュースだわ。。。
奥歯にものがはさまったような(と私には見えた)ル・モンドの記事と違って、大衆紙だからわかりやすいわ。こちらには「国際法の力でパレスチナの領土となった土地にある、ソーダストリームの工場」だそうです。このキャンペーンをはっているフランスの事務所があるようですね。そこが中心になって動いた。
女優の話はさっぱりわかりませんでしたが、この記事を読んだらちょっとわかりました。彼女は「イスラエルとパレスチナの平和のかけはしのために工場は建設された」「イスラエル人もパレスチナ人も同様の権利で働いている」と反論しているそうです。でも、Oxfamという英国のNGOの大使を降板させられたそうです。

ル・モンド紙でも、ル・パリジャン紙でも、公開書簡がちゃんと載せられていますね。ううう、すごいなあ。力もすごいし、やり方もうまいし、メディアが載せやすい書簡の長さも、すべてのお手並みが鮮やかだ。
それに比べて、内容の是非はともかく、日本のやり方は素人っぽいというか貧相だなあ。比べるのもあれなんだけど。。。

●RFI 国際フランスラジオ放送局

こちらは、フェスティバル全体の紹介をしていました。日韓問題に関することはゼロ。
今年の座長はWillemという、オランダ人で、風刺的なマンガを描いている人だそうです。

特に注目に値するのは、Jacques Tardiという、35年間第一次世界大戦についてのマンガを描き続けた作家だそうです。戦争のルポともいえるマンガのようです。この展示会のために描かれた「Putain de Guerre !」(戦争のくそったれ)という作品が、展示会の目玉のようです。例によって漫画祭代表のFranck Bondouxは「私たちにとって、それを復元して、いまの作家にインスピレーションを与えることのできる偉大な作家を探すのは、重要なことだ」とコメントしたそうです。
後は子ども向け展示の説明とか、全体的にバランスのとれているフェスティバルの紹介内容でした。

●「リベラシオン」

サルトルで有名な左派の新聞です。前に出てきた座長のWillemを大きくとりあげています。この人は、長年同紙に書き続けてきた人のようです。
ところで、このフェスティバルは、去年、グランプリの投票方法を変えたようですね。新しい規則では、リストに掲載されている人の中から選んで投票するようになったそうです。審査員の漫画家33人中16人が抗議を表明したそうです。そっちのほうを、同紙はむしろ取り上げています。
グランプリの有力候補は、Bill Watterson (Calvin et Hobbes), Katsuhiro Otomo (Akira) et Alan Moore (V pour Vendetta)。アキラの大友克洋さんが入ってますね。
うわ、今回の日韓問題が、影響を与えたりして・・・。

●Le Huffington Post (元はアメリカ。フランスのル・モンドと提携していて、独自サイトをもっています)

今年のグランプリは誰になるかという記事です。日韓問題の記述はゼロです。グランプリをとった人が、来年の名誉座長となる。名誉座長は外国人と決まっているそうで、今年の座長はWillemさん。大友さんを含む3人の有力候補にスポットをあて、3人の紹介がかなり詳しくのっています。

【追記】今、フランスで土曜日22時ですが、40分前に配信された情報によると、 ほぼ間違いなく、明日のアングレーム漫画祭グランプリ発表では、「アキラ」の大友克洋さんがグランプリをとります。
3人の誰かがとるといわれたのですが、配信されたニュースによると、そのうちの一人、Alan Moore 氏は「もし賞をいただいても、辞退する」と言ったそうです。「私を選んでくれようと思っている方には感謝するが、私は他の人が私に望むことではなく、もう私が望むことしかしない」と表明したそうです。で、もう一人のBill Watterson氏は、最近は外界と遮断していて、メディアとのコンタクトを全然とっていないそうで、めったに世間の賞賛とか社交とかに感心を示さないそうです。
だからこの記事は、「グランプリは大友氏だ」と言っています。ここでグランプリをとった人は、来年の名誉座長になります。社交をしてくれないと困るのです。

【再追記】 グランプリはBill Watterson氏がとりました。この人も、すごい実力者です。
漫画の内容からして、層や世代が、大友さんとは異なるように思います。

●SUD-OUEST 当地をしきる地方新聞

この地方新聞は有名ですね。フランスでは(日本もそうですが)、地方には、その地方をしきっているような有力地方新聞があります。これもフランス南西部と言えばSUD-OUEST、というほど有名な新聞です。

こちらでは、従軍慰安婦問題について載っています。あれれ??? 朝見たときは、確かにグーグル・フランスのニュースカテゴリーには、この問題に関する記事が2つあって、両方全文見られたのに。1つは途中からフェードアウトして見えなくなっている。この仕様は・・・やっぱり「定期購読者のみ」のページになっていた。

この記事は「Un sujet brûlant hôte du Festival BD d'Angoulême」(アングレームフェスティバルの主催者に火をつけたテーマ)というタイトルです。韓国から来た「Cho Yoon Sun男女平等大臣」(女性)がフランス人女性や他の人を案内している記事ですね。案内されている女性は、なんだか市の人っぽい感じです。

ただ、SUD-OUEST紙には、他にもたくさんフェスティバル関係の記事が載っていて、日韓問題にばかり焦点をあてているわけではありません。ネットで見る限りでは、たくさん掲載されている記事の一つ、という感じです。
ただ。紙の新聞を見ていないので、よくわかりません。(ネットでは小さく見える記事が、紙面ではものすごく目立っている。その逆で紙面では目立っていないのに、ネットでは目だって見える、ということはあります)


他には、ヌーヴェル・オブゼルバター誌や、AFPの配信記事としてル・モンドのネット版に載っています(これは新しい。朝にはなかった)。

------------------------------------------------------
もう時間がないので、この内容の続きは、あとで続けて書きます。

知り合いの情報によると、反論のためのマンガを用意していて主催者に拒否されたのは、某新興宗教団体がからんでいるそうです。でも、私も知っている団体名でしたが、新興宗教といっても色々あるわけで、公共良俗に反するというイメージはない(と思う)団体です。
フランスに住んでいるせいでしょうか、公共良俗に反しない団体やグループが、何かを主張をするための活動を積極的にしても(それが宗教団体でも)、ごく普通のことにしか思えなくなっています。日常茶飯事というか。日本だと感覚が違ったっけ?

5万人の町に、200人の作家が招かれて、20万人(多い!)の来場者が見込まれているそうです。グランプリの発表は2月2日。

フランスのメディアを通してみて、全体の感想を言うと、ほとんどはフェスティバルの紹介。慰安婦をめぐる日韓問題をとりあげているものは、いくつかある。ただ「問題」としては、イスラエルの会社のガス入り水、という印象です。

うーん、、、主催者側はどんな人たちなのか。なにか問題がある人たちなのか、それとも本当によく知らなかっただけか。まだよくわかんないです。
ただ、今年の展示の目玉が「戦争のくそったれ」ですか・・・。確かに今年のテーマは第一次世界大戦100周年ですが。
でも、その作者Jacques Tardi氏は、英語圏でも有名な人で、生涯を戦争を描くマンガにささげている人です。2013年にはレジョンドヌール勲章を授けるといわれたのに「現代の権力からも、たとえどのような政治権力であろうとも、私は何も受け取らない」といって辞退した人ですよ。これぞ本物。真の芸術家、真のジャーナリスト魂をもった人です。そういう方の作品と、国家主導の作品を、一緒に漫画祭に並べていいんですかね・・・。

【追記】
Tardi氏は、後ほど「イスラエルのスポンサーの件は知らなかった。知っていたら、この申し出は引き受けなかった」と回答しました。ル・モンドの紙面でも、かなり大きく紹介されていました。ただ、なぜ引き受けなかったかの理由は語っていません。韓国の問題については、どう思っているのだろう・・・。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。